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16- D- 0135 2016 年 5 月 27 日
電力各社の 16/ 3 期決算の
注目点
電力各社(旧一般電気事業者 10 社:東京電力、中部電力、関西電力、中国電力、北陸電力、東北電力、四国電 力、九州電力、北海道電力、沖縄電力)の16/ 3 期決算および 17/ 3 期業績予想を踏まえ、株式会社日本格付研究 所(J C R)の現況に関する認識と格付上の注目点を整理した。
1. 業界動向
業界に及 ぼす影響が大きい原子力政 策に関して、 15 年 7 月に経済産 業省は、「長期エネ ルギー需給見 通 し」において、30 年度の電源構成に占める原子力の割合は 22∼20%程度との想定を公表した。これにより、 原発依存度を震災前の約 3 割から低下させつつも、今後も一定程度原発を活用していく方針を正式に決定し た。また 15年 8月には、九州電力の川内原発 1号機で、新規制基準に適合したプラントとしては初めて再 稼働が実現しており、16/ 3期は原子力政策における一つの節目となった。核燃料サイクルの確立や原子力損 害賠償責任のあり方など、政策の根本に関わる課題に大きな進展は見られないものの、16 年 5 月に「再処理 等拠出金法」が成立し、使用済み燃料再処理事業の実施主体と資金面での裏付け強化が図られた。これも、 引き続き原発を活用していくとの政策に沿ったものといえる。
一方で、原子力規制委員会による適合性審査では、申請済のプラント 26 基のうち、許認可を得て、再稼 働あるいは原子炉起動に至ったものは 4 基にとどまっており、審査に長期間を要し、電力会社にとって再稼 働の時期を見通しにくい状況に変わりはない。16 年 3 月には、再稼働直後であった関西電力の高浜原発3、 4 号機が、大津地裁による再稼働禁止の仮処分決定を受けて運転停止を余儀なくされており、原発リスクの 一つの側面が顕在化することとなった。
16/ 3 期の販売電力量は、10 社合計で7, 971 億 kWh(前期比3. 2%減)と、東日本大震災以降、5 期連続で 前期比マイナスが続いている。16/ 3期は、暖冬の影響で暖房需要が減少したが、こうした気温影響による冷 暖房需要の増減はあるものの、一般家庭用、業務用ともに節電の意識が広く定着しつつあること、また省エ ネルギーの技術も一層の進展が見込まれることの影響が大きく、ベースの電力需要に大きな伸長を見込みに くくなっている。中期的には、販売電力量の急激な減少は想定しにくい一方で、回復のトレンドに入る可能 性は小さいと見ている。
一方で電力供給に関しては、3 段階にわたる電力システム改革のうち、第 2 段階である小売全面自由化や 卸規制の撤廃が 16 年 4 月に実施された。これに伴って、数多くの新規参入者が一般家庭などの低圧需要家 への小売サービスを開始し、電力各社も自社供給区域外での電力販売メニューを提供している。現状では全 面自由化から間がなく、需要家数が多く最も競合が激しくなると予想された首都圏でも、電力会社からの顧 客の離脱は限定的なものにとどまっている模様である。電力各社は、顧客基盤の維持、拡大に向けて様々な 業種の企業との提携を模索しており、また 17 年に実施予定のガス小売全面自由化に際して小口顧客向けの 小売サービスへの新規参入を検討している会社も見られる。一連のエネルギーシステム改革の進展に伴って、 中長期的には電力各社の顧客基盤や事業領域に変化が生じる可能性がある。
2. 決算動向
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に伴って各社の燃料費は大幅に減少し、減収の影響を吸収したことが主因である。10社すべてが経常黒字を 確保したのは震災後初めてで、一部の電力会社では過去最高益となるなど、燃料費調整制度に伴うタイムラ グ効果が大きいとはいえ、全体としては一息ついた格好となった。
17/ 3 期業績予想は、依然として原発の再稼働時期が見通せないことを背景に、10 社のうち 8社で利益予 想を未定としている。今後は、16/ 3期の大幅経常増益に寄与したタイムラグ効果は剥落すると見込まれ、ま た、これまで繰り延べてきた既存設備向けの修繕費負担が本格化しつつあるなど、利益への下方圧力を想定 しておく必要がある。原発の再稼働が実現すれば大きな利益押し上げ要因となるが、再稼働について明確に 先行きが見通せる状況にはない。
財務面では、震災後の赤字決算で大幅に毀損した各社の自己資本は、利益の回復や資本増強によって徐々 に修復が進んでいる。10 社合計の自己資本比率は、直近のボトムである 13/ 3 期末の 14. 2%から、16/ 3 期末 には 17. 5%まで改善した。ただし、17/ 3 期以降の電力各社の利益に対するマイナス要素を勘案すれば、利益 積み上げペースは緩やかなものとなり、震災前の水準まで財務構成を回復するには、なお期間を要すると予 想される。
3. 決算における格付上の注目点
16/ 3 期決算では、燃料費調整制度に伴うタイムラグ効果を除いた場合でも、多くの電力会社で黒字を確保 できたと見られる。震災に伴って原発を停止して以降、各社は燃料費負担が大きい火力発電を増やすことで 供給力を確保してきたが、その負担をカバーする料金値上げは一段落している。継続的なコスト削減努力も あって、個社別に差はあるものの、原発が稼働していない中でも利益計上できる収支構造になりつつある。 一方で、油価の上昇局面では、マイナスのタイムラグ効果による収支の悪化は避けられず、市況変動に利益 が左右される状況が続く。また、今後予想される修繕費負担から、現状程度の原発再稼働状況であれば、中 期的には 16/ 3 期のような水準の利益は見込みにくいと考える。
原子力規制委員会の適合性審査の進捗状況は、引き続き大きな注目点である。新規制基準下で初の再稼働 プラントとなった川内原発は、16/ 3期の九州電力の収支に大きなプラスのインパクトをもたらし、ベースの 収益力を向上させた。ただし、これまでの許認可の実績や、各プラントの立地自治体、周辺自治体(あるい はその住民)の理解の醸成などを勘案すれば、再稼働プラントが急速に増えることは想定しにくい。原発の 稼働は、電力会社にとって収支改善、また電源のコスト競争力向上のための最重要課題であるが、その進捗 プロセスには、これまでと同様に個々のプラントで相当の時間を要する可能性が高い。
電力の小売全面自由化に伴って、大都市圏を中心に顧客獲得競争が激化しているが、当面は電力会社の決 算に影響を及ぼすほどのインパクトは想定しにくい。一方で、一連の電力システム改革に対応する中で、燃 料調達の効率化や競争力の高い火力電源の開発、新規顧客の獲得などを目的に、電力各社は様々な提携先と 協業を進めると見られる。各社の供給区域での需要や競合状況、財務体力などの差が事業戦略や投資行動の 違いにつながり、将来の業績に影響してくる可能性もあり、今後の動向が注目される。電力各社の格付につ いては、業界全体に共通する制度的な枠組みを重視する基本スタンスを維持しつつ、引き続き、個別の事業 リスクや財務リスクの定量的評価を加味するウエイトをより高めていくことになる。
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(図表)電力各社の連結業績の推移 (単位:億円、%)
決算期 売上高 前期比 経常損益 当期損益 自己資本比率
東京電力 15/ 3 期 68, 025 2. 6 2, 080 4, 516 14. 6
ホールディングス 16/ 3 期 60, 699 - 10. 8 3, 259 1, 408 16. 1
( 9501) 17/ 3 期予 - - - -
中部電力 15/ 3 期 31, 036 9. 2 602 388 26. 1
( 9502) 16/ 3 期 28, 540 - 8. 0 2, 556 1, 697 28. 9
17/ 3 期予 26, 200 - 8. 2 1, 300 1, 250
関西電力 15/ 3 期 34, 060 2. 4 - 1, 131 - 1, 484 13. 4
( 9503) 16/ 3 期 32, 459 - 4. 7 2, 417 1, 408 15. 9
17/ 3 期予 - - - -
中国電力 15/ 3 期 12, 996 3. 5 588 339 20. 0
( 9504) 16/ 3 期 12, 316 - 5. 2 392 271 19. 7
17/ 3 期予 11, 900 - 3. 4 - -
北陸電力 15/ 3 期 5, 328 4. 5 223 90 22. 7
( 9505) 16/ 3 期 5, 446 2. 2 280 129 21. 5
17/ 3 期予 5, 400 - 0. 8 - -
東北電力 15/ 3 期 21, 821 7. 0 1, 166 765 14. 6
( 9506) 16/ 3 期 20, 956 - 4. 0 1, 526 973 15. 2
17/ 3 期予 19, 500 - 6. 9 - -
四国電力 15/ 3 期 6, 643 4. 4 245 103 21. 5
( 9507) 16/ 3 期 6, 540 - 1. 5 220 111 20. 4
17/ 3 期予 6, 500 - 0. 6 - -
九州電力 15/ 3 期 18, 735 4. 6 - 737 - 1, 147 9. 0
( 9508) 16/ 3 期 18, 357 - 2. 0 909 735 10. 1
17/ 3 期予 18, 300 - 0. 3 - -
北海道電力 15/ 3 期 6, 929 9. 9 - 93 29 9. 8
( 9509) 16/ 3 期 7, 241 4. 5 281 213 10. 2
17/ 3 期予 7, 130 - 1. 5 - -
沖縄電力 15/ 3 期 1, 850 3. 2 76 49 34. 9
( 9511) 16/ 3 期 1, 823 - 1. 5 52 36 35. 9
17/ 3 期予 1, 745 - 4. 3 66 49
10 社合計 15/ 3 期 207, 422 4. 5 3, 020 3, 648 16. 1
16/ 3 期 194, 377 - 6. 3 11, 893 6, 982 17. 5
(出所:各社決算短信)
【参考】
発行体:東京電力ホールディングス株式会社
長期発行体格付:A 見通し:安定的
発行体:中部電力株式会社
長期発行体格付:A A 見通し:安定的
発行体:関西電力株式会社
長期発行体格付:A A - 見通し:ネガティブ
発行体:中国電力株式会社
長期発行体格付:A A 見通し:ネガティブ
発行体:北陸電力株式会社
長期発行体格付:A A p 見通し:ネガティブ
発行体:東北電力株式会社
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発行体:四国電力株式会社
長期発行体格付:A A p 見通し:ネガティブ
発行体:九州電力株式会社
長期発行体格付:A A - 見通し:ネガティブ
発行体:北海道電力株式会社
長期発行体格付:A A - p 見通し:ネガティブ
発行体:沖縄電力株式会社
長期発行体格付:A A A 見通し:安定的
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